先日、某市役所のスタッフが私のことを文学館の館長にご紹介してくださり、お会いすることとなった
「今後なにか楽しいイベントなどもできるといいですね」とワクワクするようなお話ができ、春先から楽しみである。
そこの文学館はみなさんが想像している文学館のイメージと少し違って、様々なイベントを積極的に行っている。もちろん文学館なので文学がベースではあるが、『読む>見る』というより『読む<見る』というようなイメージで、見て感じ取る展覧会を数多く行っている。
過去の展示で私が好きだったのが、2019年に催された『大日本タイポ組合展「文ッ字 ― いつもの文字もちょッと違ッて見えるかも ―」』がある。
そして今行われている『575 77展』を館長からご紹介いただき、早速今日お邪魔してきた。
会場前の階段は、色違いの光が入り込む可愛らしい空間が出迎えてくれる。
風情のあるレトロな外観から中に入り二階へあがると、とんでもなくオシャレな空間が広がっている↑ここが575 77展の入り口である。
雰囲気の良さに感化され、自分自身が文学を嗜む紳士気取りなってしまっているのは、もはや私だけではないだろう、そんなかっこいい空間だ。
そもそも短歌とは?
そもそも短歌とは……俳句?川柳?ん?575?と何が違うんじゃ?と心のなかで思っている、文学を嗜む紳士を気取っている場合ではない…と思いながら会場へ入りすぐに教えてくれる最も僕らが知っている短歌↓
なるほど、国歌が57577だったとは……毎年歌っているくせに、そんなことも知らないなんて、日本人失格である。
短歌とは5・7・5・7・7の31文字で構成される和歌のことで、712年の古事記あたりから見られるらしい、759年の万葉集では身分の差がなく誰でも書かれていた記録が残っている、奈良時代あたりということだろうか。
一方俳句は、5・7・5の17文字で構成され、季語を入れるのが決まり、川柳も5・7・5の17文字で構成され、主に口語表現として書かれることが多く、決まりが特にないので「サラリーマン川柳」や「シルバー川柳」といったように一般公募でも多く見られる。
展示の工夫
そして展示の方法が色々と考えられている、館長の話によると印刷関連は業者がやっているが展示に関しては文学館スタッフの方々が毎回頑張って展示をされているそうな…こんなきれいで面白い展示を毎回スタッフの方々が頑張ってやってくださっているとは、本当にすごい…
↑たくさん展示されている短歌の中で、自分の心に刺さるものが必ず見つかるのもなにか運命的で楽しい、私は嫁から送られてくる「はい」が美しく思うこともあれば、恐ろしく思うこともあるよ、っと馬鹿なツッコミを心のなかでしながら観覧している。
「消しゴムも筆記用具であることを希望と呼んではおかしいですか」という短歌になぜが胸が打たれてしまうおかしな僕。 いや、おかしくない、消しゴムは立派な筆記用具である、消しゴムを失ったそのときに初めて筆記用具だったことに気づく字を消すことができる希望なのだ。
木下龍也(きのした たつや)さんという歌人を知る
展示会場の中に木下龍也さんの作品展示もあり、著書である『天才による凡人のための短歌教室』からいくつかの作品が紹介されていた。
その作品と一緒に木下氏の想いが一緒に展示されているのだが、例えば
『たくさんつくれ』
木下龍也
量が質を生む〜たくさん失敗することは無駄ではない。磨けばひかる石なのだ。
『なるべく書くな』
木下龍也
思いついたアイデアは頭のなかの黒板に書いておいて、なるべく文字として紙に落とさない。文字として紙に落としてしまうとそれは固定されて自由な発想に制限をかけてしまう。
どれを読んでも最高に納得のいくものばかりだ。 同時に僕が教育しているデザインというものも短歌と通ずるものがあるのだと感じた。
そんな中発見するこんな短歌
サラ・ジェシカ・パーカーが三叉路でサラとジェシカとパーカーになるってwwwwww完全に頭の中でアニメーション化された。 短歌をここまで楽しくさせてくれる木下氏に感謝である。
ここでは一般から募集で集まった短歌が吊るされている、全部見るのは大変だが、運命的な出会いもあるかもしれない、私は右の写真の短歌と出会った。
他にも短歌を色々な場所に登場させてしまう面白い表現がたくさん展示されている。
短歌をRPG風に再現した展示があったり、いやもう一番右の短歌最高だと思う。
こんな身近に感じてしまう短歌に少し目頭が熱くなってしまったり…
『炒飯を 失敗したと 下を向く 君のまつ毛が 綺麗な夜だ』
こんなスイートな新婚短歌を見ながら、そんな甘い日々はそう長くもなく
『炒飯を 失敗したと 気づいたが 嫌なら食うなと 悲しい夜だ』
という短歌が思いついてしまう心の汚れた僕がいる、いやうちの嫁の炒飯は美味しいんですよ、ホントに。
自分で作る面白さに気づかせてくれる
展示を見ていると不思議と自分でもなにか作ってみたくなるのが短歌の魅力なのだろう、その流れを知られているかのごとく展示会場終盤に体験コーナーが設置されている。
本棚の575がなかなか遊べるのだ、5の本棚には5文字の本のタイトル、7の本棚には7文字のほんのタイトルが置いてあるのだ、その中から自分で575になるように本を抜き取り並べ、SNSで写真を載せてみるというなかなか面白い企画である。
そして僕もまた本棚の前にしゃがみ込み、様々な本のタイトルを吟味した末に……
神がかった作品ができあがってしまった…
『あたしんち ぬるい生活 ユートピア』
最高の575が完成してしまった、我が家の家訓にしようかと思う。
っとまぁ、こんな感じで気がつけば短歌という世界にどっぷり浸かり、魅力に取り憑かれている。
みなさんも是非遊びに行ってください!! オススメです!!
町田市民文学館 ことばらんど
『575 77展』
会期:2022年1月29日(土曜日)から3月27日(日曜日)
会場:町田市民文学館ことばらんど 2階展示室
観覧時間:午前10時から午後5時
観覧料:無料
休館日:毎週月曜日(祝休日の場合は開館)、毎月第2木曜日(祝日の場合は次の平日)
アクセス:
・JR横浜線「町田駅」ターミナル口から徒歩8分
・小田急線「町田駅」東口から徒歩12分
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